やがて思い

2015年10月16日

 文彦の答えに耳をかたむけていた老紳士は、やがてふかいため息をついて、
「文彦くん、きみはたしかにわしのさがしている少年にちがいないと思うが、念には念をいれたい。左の腕を見せてくれんか。また、さっきのようなことがあっては……」
 さっきのようなこととはなんだろう。そしてまた、なぜ左の腕を見せろというのだろう。……文彦はまた、なんとなくうす気味悪くなってきたが、そのときだった。あの奇妙な購物商店物音が聞こえてきたのは……。
 どこから聞こえてくるのか、隣のへやか、天じょううらか……いやいや、それはたしかに地の底から聞こえてくるのだ。キリキリと、時計の歯車をまくような音。……それがしばらくつづいたかと思うと、やがてジャランジャランと、重いくさりをひきずるような音にかわった。
 武蔵野のこの古めかしい一軒家の、地の底からひびいてくるその物音……それはなんともいえぬ気味悪さだった。

「おじさん、おじさん、あれはなんの音ですか?」
 文彦は思わず息をはずませた。老人もいくらかあわて旅遊市場分析たようだったが、しかし、べつに悪びれたふうもなく、
「そんなことはどうでもよい。それよりも文彦くん、早く左の腕を見せておくれ」
 物音はいつの間にかやんでいた。文彦はしばらく老人の顔をながめていたが、きって上着をぬぐと、グーッとシャツのそでをまくりあげた。老人はくいいるように、左の腕の内側をながめていたが、
「ああ、これだ、これだ。これがあるからには、きみはたしかにわしがさがしていた文彦だ」
 老人の声はふるえている。それにしてもこの老人は、いったいなにを見たのだろう。
 文彦は左腕の内側には、たて十ミリ、横七ミリくらいの、ちょうどトランプのダイヤのような形をした、|菱《ひし》がたのあざがあるのだ。文彦はまえからそれを知っていたが、いままでべつに、気にもとめずにいたのだった。
「おじさん、おじさんのいうのはこのあざのことですか?」
「そうだ、そうだ、それがひとつの|目印《めじるし》になっているんだよ」
「それで、おじさん、ぼくにご用というのは……」
「実はな、あるひとにたのまれて、ずうっとまえからきreenex 膠原自生みをさがしていたんだよ。やっと望みがかなったわけだ」
「おじさん、あるひとってだれですか?」


Posted by 比類がない at 16:41│Comments(0)
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